都市防災関係資料 (No.1)
岩河 信文
建築研究資料 No.15, 1977, 建設省建築研究所
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<まえがき> |
わが国の都市防災研究は昭和39年の新潟地震を契機として急速に活発化した。特に当時の東大地震研究所長河角広博士が「関東南部地震69年周期説」に基づいて首都周辺の防災対策の緊急性を力説したこともこの動きに大きな貢献をした。東京都による江東地域防災拠点整備事業の推進や、広域避難対策の確立などはこの結果具体化されたものである。
しかし最近では、地震予知研究が飛躍的な進展をとげ、これに伴って都市の防災計画技術の開発が強く要望されるようになった。例えば昭和50年8月に提起された東海地方駿河湾震源説などの影響により、地震防災対策の必要性がより切実に関連地域では受けとめられつゝある。
都市防災対策には短期から長期、応急から恒久にいたる各種の対策が考えられるが、最近特に注目されているのが中期対策である。将来の理想像を示す、長期・恒久的対策に対し、中期対策では現実の状態に立脚し、次の10〜15ヶ年で可能な防災対策は何か、そこで必要とされる防災技術は何か、を解明しようとするものである。この対策には延焼遮断帯の設置、中間避難地、特別避難路の設定などが含まれている。これらの対策は都市の総合的防災システムの一環として組立てられるべきものであるが、このためには気象学、地震学、耐震工学、地質・地盤学などの基礎科学と共に、都市計画、都市社会学などの社会科学の諸分野の学際協力が必要とされる。
しかし学際協力は組織、運営の点で問題を起しやすく、なかなか充分な効果をあげ得ないことが多い。また、各研究機関とも他研究機関の研究につき、充分な情報を持っていないこともよく指摘される。このような情報不足を解消し、学際協力を推進する上で、情報文献目録は非常に有用な資料といえよう。欧米諸国、特に米国では情報活動がわが国と比べ格段に整備されており、各研究機関は、何処に、どのような研究が行われているかを、全国的なスケールで、系統的に、且つ迅速に把握できるようになっている。
わが国でも国内及び外国の代表的な定期刊行物については日本科学技術センター発行の科学技術文献速報で知ることができる。また都市防災関連の専門分野の文献目録としては「大地震調査報告文献集」・東大地震研究所宇佐美龍夫、津野潤三、1969,「都市計画文献目録」日本都市計画学会、1969,「文献目録地震工学」編金井清、1972,「地震防災対策報告書」建設省国土地理院地理調査部、昭和49年、があり、その他に本研究所でも「都市防災に関する文献ノート」杉山熈、菊岡倶也、昭和44年3月を発行している。このノートでは昭和初期から昭和43年頃までに発行された市販の単行本や雑誌・論文記事、その他関係地図類についてまとめている。
上記の文献目録では市販されていたり、あるいは公開を目的として発表されている図書・雑誌類の資料を主として取り上げているが、一方限定範囲にしか配布されない国、地方公共団体、あるいは民間関係機関発行の専門報告書に対しては情報が非常に乏しい。しかもこれらの専門報告書は価値の高い情報を含んでいることが多く、新たに、問題解決のヒントを得ることや研究の重複の回避に役立つことが指摘される。
本文献目録は上記の目的を達成するために企画されたもので、対象を過去10数年間に国・地方公共団体、民間関係によって発表された専門報告書とし、項目別に分類した「都市防災研究資料リスト」に収録されている478編のうち162編を取り上げて、その内容を簡単に紹介したものである。(リスト中、○印は、本書に収録のもの)項目別に見てみると、防災施設関係が一番多く26編、以下震災対策が17編、危険物、災害事例報告それぞれ14編と続いている。
調査主体としては東京都防災会議によるものが最も多く35編、次に東京都(総務局、首都整備局)21編、東京消防庁18編、名古屋市防災会議16編、本研究所15編となっている。
本研究部では今後、都市防災関係の単行本や雑誌・論文記事についても整理し、今回収録できなかった専門報告書と共に、遂次、紹介していくことを企画している。
なお、本作業は、本研究部、都市防災研究室長、岩河信文、同室助手、武藤重が担当し、全体的な監修は私があたった。
本文献目録編纂のための資料収集にあたっては、公私の関係諸機関の御協力をいただいた。こゝに厚く感謝の意を表する。
昭和52年3月
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