1978年宮城県沖地震による既製コンクリート杭の被害調査報告
杉村 義広 大岡 弘
建築研究資料 No.31, 1981, 建設省建築研究所
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<概要> |
1978年6月12日に発生した宮城県沖地震以来、主として仙台市において杭基礎の震害例が発見され出しており、その被害様相は、杭基礎の耐震性の考慮の必要性を改めて強く示唆している。今回の被害相様の特徴は、水平層から構成される平坦地に施工された杭基礎が、地震動の作用によって破壊に至ったという点にあり、この種の被害が確認されたのは、恐らく、我が国では最初の出来事であって、杭の耐震設計の在り方の再考と、今後への問題点を示したものと考えられる。
この地震被害の様相は、今後の杭基礎の耐震設計に貴重な資料となるので、記録保存という観点から、この研究では、杭基礎の震害事例の収集整理と、観察による追加実態調査を通じて、その原因追及を行った。
調査の対象とされた杭基礎の事例は、9例であり、そのうち地震被害を受けたものは6例にのぼっている。これらの特徴は、1例を除いて、すべて平坦地にあり、粘性土を主体とする表層軟弱層中に、既製コンクリート杭(RC、PC、AC)が設置されており、杭長は5〜10Mの比較的短いものが多く、表層軟弱層は数M程度の薄い層である事、長期鉛直耐力は、とくに高強度プレストレスコンクリート杭(AC杭)において、通常想定される耐力よりもかなり大き目の値が採用されていることなどである。杭の地震被害は、程度の重いものから順に、完全圧壊したもの、曲げせん断ひびわれを生じ、圧壊を伴っているもの、圧壊まで至っていないが、曲げひびわれを生じているものに大別される。
これらの地震被害の原因としては、入力地震動、地盤構成、構造計画、杭材料、構造設計、施工のそれぞれに要因が考えられ、これらの不利点が重なり合った結果大被害が生じたものと推定できる。
また、これら地震被害の原因追及から得られる今後の耐震設計において考慮されるべき問題点をあげると、次の様なものとなる。
(1)基礎形式の適切な選定と地盤調査の実施
(2)杭材種と施工法の適切な選定
(3)複合荷重の考慮
(4)杭頭の固定度の考慮
(5)杭の施工性に対する考慮
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