日本におけるパッシブソーラーハウス
小玉 祐一郎
建築研究資料 No34., 1982, 建設省建築研究所
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<概要> |
住宅における太陽エネルギー利用に関する研究は,近年活発に行われている分野であるが,技術的なアプローチのちがいから,太陽エネルギー利用システムは,アクテブソーラーシステム,パッシブソーラーシステムの2つにわけられるようになってきている。
パッシブソーラーシステムの特徴として,1)太陽エネルギーをはじめとする自然エネルギーを直接的に利用し,エネルギー濃縮,変換のプロセスをもたないこと,2)集熱,蓄熱,放熱各部位の間の熱の移動に,在来エネルギーを多用をしないこと,3)建物全体を1つのシステムと考えること,などがあげられるが,これからも明かなように,建物自体の設計がシステムの性能に大きく関わっており,対象とする地域の気候特性に適応した個別的な技法の綜合化技術が重要な開発課題とされているのである。
具体的には,個別的な部位の機構を定量的に解明することと,それらが組みこまれた住宅における総合的な居住性についての検討がされなければならない。
本資料は,我国の気候の異った地域に建設されたあるいは建設予定の住宅を対象として,導入されている個別的なパッシブソーラーの技法,それらの綜合化の技法およびその効果を調査した結果をとりまとめたものである。調査事例はいずれも独自な技法を用いて地域の気候特性との適応が図られている。
これらの事例と通して,明らかなことは,パッシブソーラーシステムの住宅への取りこみは,気候毎に,居住形態毎に,用いられる個別的な手法にも,綜合化の手法にも,多くのバリエーションがみられることである。
異った気候下におけるパッシブソーラーシステムの対応とその効果については,具体的な建設・居住によって初めて示唆される点も少なくなく,調査の対象となった先駆的事例は,この意味で今後の設計指針の形成に資するところがきわめて大きいといえる。
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