■建築研究資料

震害調査に関する基礎資料

北川  良和、塚越  功、山内  泰之、熊谷  良雄

建築研究資料  No.42,  1983,  建設省建築研究所


<概要>

  我国は、世界有数の地震国であり、かつ、地形地盤等の各種自然条件が、地震に対して脆弱な場合が多く、これまでに地震により多大の物的・人的被害を受けてきた。特に、都市部において建築構造物は、地形・地質的要因から、一般に、沖積層上に立地しているものが大部分であり、昭和30年代後半からの大都市への人口集中に伴う木造家屋の適度な密集や、避難路等の未整備、ライフラインの拡張等社会的・機能的条件と相まって、一度、地震に見まわれると都市災害として、これまでに考えられなかった形態の被害や、個々の災害の相互波及による全く新たな災害が発生する可能性が生まれている。
  古くは、大正12年9月に発生した関東地震による木造密集地域での市街地大火と、火災旋風による物的・人的被害、最近では、昭和39年6月の新潟地震や、昭和53年6月の宮城県沖地震等による被害が、都市災害としての機能的被害の恐ろしさを見せつけている。
  近年の地震被害調査は、各種機関によって、それぞれ独自に行われている傾向が強く、震害調査の目標が、単に、構造的被害にとどまらず、建築物、又は都市といったトータルシステムとしての耐震性についての調査、検討が要求されていることを考慮に入れると、総合的な震害調査体制づくりが不可欠といえる。このため、理学、工学といった自然科学的側面からの調査だけでなく、社会学、経済学、政治学、心理学といった社会科学的側面をも加えた総合的な調査が必要とされるとともに、これらの震害調査に課せられた姿といえよう。
  このような背景のもと、震害後、直ちに総合的な震害調査が実施できるよう各分野での調査体制を、事前に完備する必要がある。本資料は総合的な震害調査について、討議を重ねていく上で必要な基礎資料の蒐集という観点から、建築研究所および所外で、これまでに行われた震害調査の調査内容、調査体制等に焦点を当て、整理したものである。今後、全所的調査体制の提案、建築学会を始めとする所外研究機関との調整および行政機関を含めた調査体制の確立が必要と思われる。


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