■建築研究報告

地震火災時のリアルタイム情報処理システムの開発

石見利勝, 河中 俊, 塚越 功, 糸井川栄一, 梶 秀樹, 熊谷良雄, 増山 格

建築研究報告  No.120,  1989,  建設省建築研究所


<概要>

  大規模地震によって、大都市に同時多発の火災が発生し、大火に至った場合に、その市街地大火の現場において、道路啓開、消防運用、避難誘導、等の応急対策を円滑に実施するためには、火災、避難、市街地状況、等の現況と今後の見通しに関する「情報」が最も重要であり、その例としては古くは「関東大震災」における人々の非効率な避難行動、最近では、昭和61年11月の「伊豆大島火災噴火」における効率的集団避難行動等を挙げることができる。本研究では、このような現場のニーズに応えるリアルタイム情報処理システムの開発を目ざして、まず、その主要な二つのサブシステム即ち、延焼拡大予測モデルと避難情報モデルを開発する事を目的としている。

  第1章で研究の背景と目的を述べ、従来の研究との相違、本研究の独創性、等についてまとめている。

  第2章リアルタイム情報処理システム(RTS)の概要では、本システムを中心とする「情報システム」に支援された、現場の応急対策の状況を考察し、その現場での有効支援のための、情報の画像処理について述べている。そして、科学技術振興調整費による他の研究成果をもり込んだ「総合的防災情報システム」のあり方について考察している。

  第3章で延焼拡大RTSモデルについて述べている。まず、延焼拡大予測モデルに関する既往の研究を概観し、それ等と対比しながら、本研究の特徴、改良点について述べている。次にモデルの基本構想について、火災の延焼拡大現象の記述方法とリアルタイムシステムとして開発するための方法をまとめている。さらに、モデルの細部を構築するにあたっての工夫、理論的展開、等を中心に、延焼モデルを説明している。その後、本モデルの特徴のひとつである学習効果の考え方、本モデルが機能するための前提となる、延焼状況の把握方法についての実験について述べている。

  第4章避難情報RTSモデルでは、第3章と同様にまず、避難モデルに関する既往の研究を概観し、それ等と対比しながら、本研究の特徴、改良点、等について述べている。次に、避難誘導体制の現状、そのあり方を考察し、避難情報RTSモデルの要件を整理して、本研究で新しく提案している「最遅避難モデル」の構想を述べている。次に、その構想にもとづくモデル構築にあたっての理論的展開と、モデルの構造、を説明している。

  第5章でケーススタディーについてまとめている。データ作成、ケース設定、画像表示、等の具体的な方法について説明し、延焼拡大予測と、避難情報処理のケーススタディー結果を述べている。

  第6章は、本研究のまとめである。

  研究全体のとりまとめを述べ、今後に残された研究課題、そして、本システムの実際の適用に関する課題、を考察し、今後の展開の方向についての考察を加えて、しめくくりとしている。


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