■建築研究報告 |
「建築物の耐火設計における火災リスク基盤の火災荷重の設定方法」 田中 哮義、水上 点睛 建築研究報告 No.152(2022(令和4年)10月)
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<概 要> |
建築基準法施行令第107条(以下、令第107条)に規定される耐火性能に関する技術的基準(耐火規定)は、建築物の主要構造部材―柱を例にすると、その要求耐火時間を建築物の階数に応じて1時間、2時間、3時間と一律に定めている。一方、1998年の建築基準法の改正に伴って導入された耐火性能検証法(令第108条の3、平成12年5月31日建設省告示第1433号)は、従来の仕様規定による要求耐火時間に代わって、用途に応じて収納可燃物の床面積当たりの発熱量(本報告では、設計火災荷重密度と定義する。)を規定し、その条件の下で火災に曝される荷重支持部材や区画構成部材の安全性を工学的に検証する方法である。。
建築物の火災性状は建築空間の形状や材料などの諸条件によって異なるので、部材の耐火性能評価にこれらの条件を考慮できる点では耐火性能検証法が令第107条の耐火規定よりも合理的である。しかし、実際の建築物内の収納可燃物の床面積当たり総量(積載火災荷重密度)は確率的に分布する値であるが、設計火災荷重密度を用途毎に一律に規定とすることは、実際の積載火災荷重密度が設計火災荷重密度を超過した場合には、建築物が崩壊することを許容することに他ならない。建築物が崩壊した場合の人命・財産の損失や近隣・社会一般の生活や経済活動への不利益は、建築物が大規模であるほど大きく、小規模であるほど小さいのであるから、火災時リスクの観点からは階数や規模によって耐火性能の要求レベルを変えている、仕様規定の方が合理的ともいえる。
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