■建築研究報告 |
「リスク基盤の避難安全検証法に関する研究」 田中哮義、出口嘉一、仁井大策、久次米真美子 建築研究報告 No.154(2023(令和5年)3月) |
<概 要> |
建築物は人々を種々の危険から安全に保護する上で不可欠のものであるが、火災によって逆に深刻な危険をもたらしてきたことも否定できない事実である。建築火災からの安全確保のために昔から様々な努力が積み重ねられてきたが、次第に建築法規に防火基準を導入することで火災安全を確保するための主要な手段になって現在に至っている。しかし、建築に関する種々の技術や諸環境が急速に変化してゆく中で、火災安全対策を法規の仕様書的基準のみで合理的に処理し続けることは無理なことが次第に明らかとなり、そのため性能的方法による建築物の火災安全設計への期待と導入への動きが世界的な潮流となってきている。しかし、それはなお発展途上の方法であり、検討・改善すべき点を多く残している。 本報告におけるリスク基盤の避難安全性能検証法の概要は以下の通りである。 (1) 避難リスクと死傷確率 任意の空間の‘避難リスク’ を火災の発生確率と死傷者数の期待値の積、火災により発生する死傷者数の期待値として定義する。または、当該空間の在館者数と火災(小火を除く)が発生した場合の死傷確率の積とする。 (2) 許容避難リスクと標準建物空間(Benchmark building space) 建築空間はその規模、用途などに関わらず、何れも火災による避難リスクは等しく一定の許容リスク以下でなくてはならない。すなわち。 (3) 設計ベースの許容避難リスク、許容死傷確率 避難リスクは火災発生確率を含むが、避難安全設計は火災が発生したことを前提に作業が始まる。その場合の避難リスクを設計ベースの避難リスクと定義する。すると、設計ベースの許容避難リスクは、、許容死傷確率は、で与えられる。 *2 国土技術政策総合研究所 建築研究部 防火基準研究室 主任研究官 *3 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 助教 *4 株式会社日建設計 設計監理部門 セーフティデザインラボ(防災計画) ダイレクター 計算プログラムの配布について |
|