■建築研究報告

極大地震動に対するエネルギー法による鉄骨造建築物の耐震安全性評価と計算事例

長谷川隆,荻野雅士,富澤徹弥,金城陽介,植木卓也,
加藤敬史,脇田直弥,松蔭知明,大内京太郎,鈴木悠介,
小板橋裕一,一戸康生

建築研究報告 No.155(2024(令和6年)3月)
国立研究開発法人建築研究所
264p


<概 要>
 
本報告は、今後、発生が懸念されている首都直下地震や巨大海溝型地震など現在の耐震基準上の想定よりも大きな地震動(極大地震動)に対する鉄骨造建築物の耐震対策として、エネルギー法に基づく新たな評価方法を提案し、それを用いた試設計建物の計算事例を取りまとめたものである。以下に、提案された評価方法の概要を示すとともに、5つの試設計建物の検討概要を示す。
1) 繰り返し変形を考慮したエネルギー法の計算
 鉄骨造建築物では、継続時間の長い地震動で鉄骨部材が繰り返し変形することによって疲労的に破断する可能性があり、鉄骨部材の繰り返し変形の影響を適切に評価できるエネルギー法の計算方法を提案した。提案した計算方法は、梁端部の疲労性能評価式に基づいて、各層において、最初に梁端が破断するまでに当該層が吸収できるエネルギーを層の保有エネルギーとし、層の必要エネルギーと比較することで建物の耐震安全性の検証を行う方法である。また、断層近傍の地震や巨大海溝型地震など、地震動特性に対応したエネルギーの増加倍率を考慮した必要エネルギーの計算方法等を示した。
2) 極大地震動に対する5つの試設計建物の耐震安全性の計算事例
 本報告で提案されたエネルギー法による耐震安全性評価方法を用いて、5つの試設計した鉄骨造建物(4層事務所ビル、8層事務所ビル、9層事務所ビル、12層事務所ビル、4層物流倉庫)、を対象に、極大地震動に対する耐震安全性の評価計算を行った。これらの試設計建物の計算から、本報告で提案した計算方法を用いることで、入力地震動の特性やレベル、建物の梁端部仕様、ダンパーの挿入、高強度鋼の使用によって、各層の保有エネルギーに対する必要エネルギーの比がどのように変化するか明確に示すことができ、その有効性を示すことができた。

   表紙・はしがき・概要・目次 411KB
   第1章 はじめに 503KB
   第2章 繰り返し変形を考慮したエネルギー法による鉄骨造建築物の耐震安全性検証方法 985KB
   第3章 計算例1)4階建て事務所ビルの設計と耐震安全性評価の計算 3,346KB
   第4章 計算例2)8階建て事務所ビルの設計と耐震安全性評価の計算 7,354KB
   第5章 計算例3)9階建て事務所ビルの設計と耐震安全性評価の計算 12,588KB
   第6章 計算例4)12階建て事務所ビルの設計と耐震安全性評価の計算 9,482KB
   第7章 計算例5)4階建て物流倉庫の設計と耐震安全性評価の計算 3,073KB
   第8章 おわりに 152KB
   奥付 44KB
   全文 36,615KB

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