■建築研究報告 |
式根島震害調査報告 木村 蔵司 建築研究報告 No.50, 昭和42年11月 |
<概要> |
昭和42年4月6日15時17分,伊豆七島式根島付近に発生した地震は,式根島に甚大な被害を与え,テレビ,新聞等により抗火石を使用した石造建築の非耐震性が強調された。 もとより組積造建築の非耐震性に関しては論を待たないが,新島における唯一の特産物として,その開発に努力している村役場の立場を考えるとともに,すでに耐震構造法については,筆者らの実験研究により,その指針が示されている今日,石造建築工法のいかんを問わず,ただ非耐震性のみを強調されることは,特産物としてのこの種石材の特殊性を阻害するばかりでなく,この種の材料による建築技術の進歩を阻害するものとして,震害の実状調査に深い関心を示した。 すなわち,東京都庁においては,昭和23年から新島産抗火石の開発に着手し,東京都材料検査所による材料試験,昭和24年8月23日から9月7日までの東大久野久博士による地質調査,および昭和25年当所による抗火石壁体の実大試験(受託試験),および昭和33年新島村長からの受託による「新島抗火石利用補強石造建築の耐力性状に関する研究」を重ねる一方,東京都庁による補強石造建築の試作建物を新島村営住宅に採用するなどして,補強石造建築に対する指導育成に努力してきた経緯を考えるとき,今回の被害がいかなる工法による建築物に発生しているか,補強石造である場合には弱点がどこにあったか等を調査して,この種石造建築の健全な発展をはかるとともに,震害対策資料を得んとした。調査は建設省建築研究所のほか,東京都首都整備局建築指導部の石田昇氏が分担したが,それと同時に東京都庁住宅局貸付課が住宅復興資金の貸付事務を行うために同道した。 調査期間 昭和42年4月20日〜4月26日 本調査に関しては,新島本村役場当局および大島支庁の応援をいただいた。とくに前村長植松籐吉氏,前産業課長釜亀次郎氏,大島支庁総務課長落合儀一氏,式根島支所長前田万作氏,および被害建物調査に協力された,現地の前田惣七郎氏,宮川勉氏に感謝の意を表する。 |