LCCM住宅ニュース
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LCCM住宅とは |
低炭素社会を目指し、平成22年度に政府が示した「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)には、我が国の長期目標として、2020年に温室効果ガスを1990年比で25%削減と掲げられている一方、住宅の高断熱・高気密化や機器の効率化の進展にもかかわらず、住宅分野における二酸化炭素排出量の増加が続いています。
上記長期目標を達成するには、住宅分野では、まず省エネルギー化の推進による二酸化炭素排出抑制を図り、建築物の更なる省エネルギーを進めることが必要不可欠です。 このような背景のもと、LCCM 住宅(Life Cycle Carbon Minus:ライフサイクルカーボンマイナス住宅)とは、住宅の長い寿命の中で、建設時、運用時、廃棄時においてできるだけの省CO2 に取り組み、かつさらに太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーの創出により、住宅建設時のCO2 排出量も含め生涯でのCO2 収支をマイナスにする住宅として提案されたものです。 |
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具体的には、まず運用時のエネルギー消費を大幅に削減し、その消費量を上回るような太陽光発電を導入することで、建設時等に発生したCO2を運用時の余剰エネルギーにより返済する事になります(図 1)。
ただし、一般への普及を考えた場合、運用時のエネルギー消費を大幅に削減する際に、健康・安全性、快適性、利便性等を低下させてしまうと実効性が損なわれると考えられますので、そのような性能はできるだけ残しておく必要があります。 |
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図 2にあるように、従来の住宅であれば運用年数が増えるほどCO2排出量は増えていきますが、LCCM住宅では改修の際には少し増えるものの、全体としてCO2排出量は減少していき、ある年数が経過したところでマイナスとなります。 |
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研究体制 |
LCCM住宅やゼロエネルギー住宅への関心は世界的に見ても高まっていますが、研究的にはまだ不十分でその技術的可能性等を明らかにする必要があります。そこで、建築研究所では、個別研究開発課題「建築・コミュニティーのライフサイクルにわたる低炭素化のための技術開発(平成21〜22年度)」の中で「LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅に関する技術の開発」という項目を掲げて研究を進めています。この研究実施にあたり国土交通省国土技術政策総合研究所および日本サステナブル建築協会を参画者とする共同研究として「ゼロエネルギー住宅に関する研究」を2009年より開始しました。
また、これと併行し国土交通省住宅局の支援による研究開発事業として、一般社団法人日本サステナブル建築協会内に設けられた「ライフサイクルカーボンマイナス住宅研究・開発委員会(委員長:村上周三 建築環境・省エネルギー機構 理事長)」において、平成21年度からの3年計画で研究開発が進められています。
LCCM 住宅研究・開発委員会 |
委員長 |
村上 周三 |
建築環境・省エネルギー機構 理事長 |
委 員 |
伊香賀 俊治 |
慶應義塾大学 教授 |
桑沢 保夫 |
(独)建築研究所 上席研究員 |
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清家 剛 |
東京大学 准教授 |
小泉 雅生 |
首都大学東京 教授 |
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吉野 博 |
東北大学 教授 |
本藤 祐樹 |
横浜国立大学 准教授 |
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前 真之 |
東京大学 准教授 |
兼松 学 |
東京理科大学 准教授 |
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村田 涼 |
東京工業大学 助教 |
秋元 孝之 |
芝浦工業大学 教授 |
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白石 靖幸 |
北九州市立大学 准教授 |
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今後の展開 |
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「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)では、2020年まで温室効果ガスを1990年比で25%削減する目標を達成するため、2013年度までにネットゼロエネルギー/ゼロエミッション化にむけた省エネ基準適合の段階的義務化等を実施し、2020年までにZEH(ネットゼロエネルギー/ゼロエミッションハウス)を標準的な新築住宅にするとともに、新築公共建築物等でZEB(ネットゼロエネルギー/ゼロエミッションビル)を実現することとしております。これらの実現に向け、建築研究所では今回ご紹介したLCCM住宅により必要な技術基準の策定に反映するための研究を実施していきます。
なお、2010年11月12日に、国土交通省、経済産業省、環境省の3省は、2020年度までに全ての新築建物に対して省エネルギー基準の適合を義務付ける案も公表しております。建築研究所はこの新しい技術基準の策定に反映するための研究もあわせて推進していきます。
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