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210号(2024(令和6年)1月) 既存壁式RC造共同住宅における躯体改造技術に関する研究
向井智久,中村聡宏,有木克良,香取慶一,秋山友昭,沼田卓也,北堀隆司, 釜瀧和也,南部禎士,田沼毅彦,岡部喜裕,高光宏明,塚本英司 国立研究開発法人建築研究所
人口減少・高齢化・未使用既存住宅(空き家)が顕著化する一方で,気候変動の影響による自然災害が頻発していることから,2050年のカーボンニュートラル社会の実現を標榜しており,既存ストックの有効活用,建築物の長寿命化が求められている。 本稿では,既存中低層壁式鉄筋コンクリート造(以下,RC造)建築物の機能性を向上させることで,既存ストック活用を促進するための技術開発結果について報告する。本研究においては,水平方向への面積規模拡大やエレベーターの増設に合わせた住棟内共用廊下の新設などを目的とした耐力壁への開口新設,および,居住性能を高めることを目的とした床スラブの新設について検討した。 床スラブの新設については,主筋の定着に接着系あと施工アンカーを用いた場合の長期性能および終局性能について,長期載荷実験および短期載荷実験により実験的に確認した。 また,耐力壁への開口の新設については,新設開口設置に伴い必要となる周辺部材の補強として,耐力壁端部の曲げ補強筋として接着系あと施工アンカーを用いる方法,および,壁梁部分の外付け壁梁による補強を提案し,その補強の有効性について部材実験・架構実験により確認している。また,新設開口設置および周辺部材の補強工事における,適切な品質管理体制について,実験試験体および実建物における新設開口施工実験を通じて明らかにしている。 壁式RC造建築物の躯体改造において,新設開口設置前後の建築物全体の構造性能を評価しうるモデル化手法について検討し,実験結果を再現できること,既存のRC造共同住宅の構造性能を評価できることを示している。 最後に,これまで検討結果を踏まえ,構造耐力上の危険性が増大しないことを確認する方法として,適切にモデル化された建物解析モデルに基づく保有水平耐力計算により確認する方法を提案する。
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